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アポトーシスは、おそらく最初は体から有害なウイルスを退治するために進化したのであろう。
ウイルスに感染した細胞が、数千もの新しいウイルスをつくるまえに死ぬならば、確かに感染が体全体に広がるのを防止できるであろう。 細胞分裂が制御できなくなった場合にも、アポトーシスの引き金がひかれるかもしれない。
たとえば、もし細胞が分裂せよと命令する信号を受け取っても、新しいたんぱく質をつくるのに必要なアミノ酸が手に入らないために分裂できないとき、アポトーシスによってその細胞は死ぬことになる。 あるいは、細胞のDNAがひどく損傷していて、分裂するままにしておくことがその動物にとって危険となりそうなとき、いくつかの癌抑制遺伝子がアポトーシスを活性化する。
この自殺プログラムは、DNAを切り刻む細胞酵素を活性化して、瞬間的な細胞死を引き起こす。 ほんの三0分も経てば、その細胞は再起不能なまでに傷ついており、通りすがりのマクロファージ(大食細胞)によってたちまち貪食される。
ウイルスがそれぞれの宿主と接触してきた何百万年もの問に、腫傷ウイルスも非腫傷ウイルスも、細胞にアポトーシスに抵抗するよう説きつける方法を進化させている。 細胞分裂と同じように、アポトーシスは、多くの正(死または自殺)と負(生存)の調節遺伝子をもっていて、それらの働きが微妙に釣り合いを保っている。
ここでもまた、ウイルスはそれらに影響を及ぼす高度に複雑な手段をもっている。 あるウイルスは、EBVのように、彼ら自身の細胞生存遺伝子を携行するか、細胞内のその種の遺伝子を働かせることによって、細胞死プログラムをひそかに傷つける。
また別のウイルスは、アデノウイルスのように、細胞の自殺遺伝子を抑制する。 彼らがどのような手段でアポトーシスに接近しようと、その結果は同じである。
すなわち、感染した細胞は増殖性もしくは潜伏性の感染を支えるに足るだけ長く生きるのである。 これは腫傷の進化においてきわめて重大な出来事であったに違いない。
大いなる逃走大部分の腫傷ウイルスは、その名前にもかかわらず、まったく危害を加えることなく正常な人々に一生続く感染を確立する。 それというのも、持続性ウイルスは宿主の免疫系によって非常に効率よく制御されているので、第4章で見たように、そこにじっと居続けるためには相当な低姿勢を維持していなければならないからである。
したがって、ウイルスによって引き起こされる腫傷が、免疫系が適切に働いていない人たちにより多く見られることは意外ではない。

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